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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1989年
T・コラゲッサン・ボイル「沈む家」


メグ・ターウィリガーは家でストレッチ体操をしている時、絨毯が湿っているのに気付く。一瞬、飼い犬が粗相をしたのかと思ったが違う。また、冬にはコンクリートから湿気がにじみ出ることも時々あるが、今は真夏で、しかもここ数ヶ月間雨も降っていないので違う。もしかして、夫がホースの水を出しっぱなしにして出かけてしまったのだろうか。不思議に思ったので、様子を見に庭に出た。
庭に出ると、そこいら中が水浸しで靴がずぶずぶと沈んでいってしまう。メグは靴をぐしょぐしょにしながらホースを点検したが、しっかり閉まっていた。それなら壊れたスプリンクラーがあるのか。メグは一つひとつ調べて回った。そのうちに隣の老女のことを思いだす。この前に亭主が死んだところなので、ショックで水を出しっぱなしにしたまま忘れているに違いない。そう思って隣の家の垣根に忍び足で近づいた。そして庭を覗き込むと、スプリンクラーが付けっぱなしでホースからも水が出つづけていた。
メグは隣の家に水を止めてもらうように言いに行った。玄関のベルを鳴らすと、老女が出てきた。
「隣のメグ・ターウィリガーですが…裏のスプリンクラーの水が出しっぱなしなの、ご存知かしら?」と聞く。しかし老女は「大丈夫よ」と答えるのみ。「配管の具合がおかしいのでは?」「スプリンクラーを見てくれません?」「そこいら中が水浸しなの」と訴えても、老女は「大丈夫よ」を繰り返すばかり。そしてドアを閉めてしまった。
メグは仕事から帰ってきた夫とともに、もう一度老女に会いに行くのだが…。
少しホラーチックな展開をみせる作品。長い間連れ添った夫を失った老女が、哀しみにくれながら何を思い毎日を過ごしてきたのか。愛する人を失うと、これほどまで気持ちが“沈み込む”ものなのだろうか。
(青山南訳/新潮社『もし川がウィスキーなら』所収)
                           (2004.6.2/B)

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