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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1948年(Third Prize)
レイ・ブラッドベリ「発電所」


この旅は、今朝届いた一通の電報をふたりが読んで以来続いている。男と彼の妻は馬にまたがり、いつ終わるともしれないほどの距離を移動しようとしていた。
ふたりが会話をしなくなってから数時間が経った。アリゾナの空には雷雲が立ちこめ、ますます雲行きが怪しくなってきた。風が強くなり、終いには冷たい雨がパラパラと降り出した。
「黒雲が出て来た。すこし様子を見よう。雨になりそうだ。濡れちゃまずいな」
彼らの前方に赤レンガの建物が見えたので、そこで休みをとることにした。
「なんだか誰もいないようだな」
ドアの横の看板には、こう書かれていた。
『危険。電力事務所』
建物の中には誰もおらず、ただ“大きなハミングに似た音”が聞こえるばかりだった。
妻は夫の手をしっかりとすがりつき、ふたり一緒に建物の中に入っていった。
一時の雨宿りのつもりだったが、外は雨がいっそう強くなるばかり。彼らはそこで一夜を明かすことにしたのだが…。
厳粛なムードの中で起こる、あるできごと。いかにもブラッドベリらしい作品だ。
(小笠原豊樹訳/ハヤカワ文庫NV『太陽の黄金の林檎』所収)
                           (2006.12.13/B)

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