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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1933年
アースキン・コールドウェル「スウェーデン人だらけの土地」


日の出の半時間ほど後のこと。“まるで零下二十度で運河の水門が凍って破裂したような”大砲の発射音がした。おれはこんな大きな音を、こんな朝っぱらから聞いたことがない。だから聞いたときは体がベッドから6、7インチほど浮いたぐらいだ。3、4年前から、ジムとミセス・フロストの家に雇われて暮らしているが、彼らが階下でばたばたしているのが聞こえた。二人がこんな早い時間にベッドから出ていること自体が事件なので、これは尋常ではないと思った。
おれは外で何が起こっているのかジムに聞いてみると、彼は「スウェーデン人野郎だ!あの野郎どもがぶっ放している」と答えた。
「あの農場で暮そうと一家が戻ってきたのか?」
「そうだとも。畜生」
また、ミセス・フロストが受けた衝撃はジム以上のものがあるらしく、彼女は自分のしていることが分からなくなるぐらいスウェーデン人を恐がっていた。
一方、生まれてからずっと「バック・キングダム(田舎の王国)」にいたおれにとっては、彼らがなぜスウェーデン人をこれほど恐がるのかが理解できない。何故なら、おれは“フィンランド人やポルトガル人が恐くないのと同じように、スウェーデン人は恐くなかった”からだ。
さて、彼らはスウェーデン人たちを見張っていたが、ジムとミセス・フロストの家の芝生にスウェーデン人の子供がふたり入ってきてしまい…。
この作品では大挙して押し寄せてくる移民に大わらわになっている、アメリカ(白人社会)を諷刺しているが、ここまで恐がると滑稽以外の何ものでもない。
下記書目の解説によると、この作品はイェール評論賞も受けているらしい。
(大津栄一郎編訳/岩波文庫『20世紀アメリカ短篇選(上)』所収)
                           (2006.6.27/B)

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