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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1946年
トルーマン・カポーティ「ミリアム」


61歳になるミセス・H・T・ミラーは、夫を亡くした後、ニューヨークのマンションで一人暮らしをしている。友達と交際するわけでもなく、着飾って遠くまで遊びに出かけることもほとんどない。トミーという名のカナリアの世話をしながら、部屋を清潔に保ち、ただ自分のために食事を作るごくありふれた生活を送っている。
そんなある日、新聞の映画宣伝広告を見て、観に行きたいという衝動にかられた彼女は、雪の降りしきる中、映画館に向かう。そして映画館のチケット売り場の前で待っている時、入口に立っている少女を見かける。何故か異様な胸騒ぎを覚えるミセス・ミラー。彼女と会話を交わすうちに、少女の名前がミセス・ミラーと同じ“ミリアム”であることを知る。
それから一週間ほど経ってから、あの映画館で知り合った少女が、雪の降る日にミセス・ミラーの家に度々来るようになる。しかし、何故少女は彼女の家を知っていたのか、彼女にはまったく心当たりがない。そうこうするうち、家でいつも決まって不思議な行動をする少女に、ミセス・ミラーは徐々に奇妙な恐怖感を持つようになるのだった。
劇的なストーリー展開があるわけでもなく、泣いてしまうほど感動的なラストシーンが用意されているわけでもない。その静かに淡々と進むストーリーに、カポーティらしい大人の味と奥の深さが感じられる。
(大津栄一郎訳/岩波文庫『20世紀アメリカ短篇選(下)』他、新潮文庫『夜の樹』など所収)
                           (2003.10.23/B)

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