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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1975年
レイモンド・カーヴァー「あなたお医者さま?」


ある夜、アーノルドの元に一本の電話がかかってくる。時計は十時を回っていたので、それは出張中の妻からの電話だと思ったが、電話の向こうから聞こえてくる声は、まったく知らない女性のものだった。
「もしもし」とアーノルドが応対すると、女性は「どちら様ですか?」と聞いてくる。何故彼の家の番号を知っているのか聞いてみると、彼女はベビーシッターがこの番号を書いたメモを残していて、誰の番号か全然分からなかったのでかけてみたのだと答える。彼は“じゃあ、そのメモをゴミ箱に捨ててもらうだけで結構なので”と言って電話を切ろうとしたが、電話の彼女はまだ電話を切らずに話を続けようとした。
「私の名前はクララ・ホルト。あなたの名前は?」
彼は“アーノルド・ブライト”と答え、“本当に電話を切らなきゃならない”と言って再度電話を切ろうとしたのだが、彼女は何やら切羽詰まった雰囲気で“あなたとどこかでゆっくりとお話をしたい”と言うのだった。
次の日の午後、彼の家に昨日の女性から電話があった。
「大事なことなの」
「来て下さいってあなたにすがっているのよ」
そう言って自分の住所を教える彼女に対し、何か急を要する用件があるに違いないと思ったアーノルドは、彼女の住所を書いたメモを手に、タクシーに乗って彼女の家をめざす。そして、彼女の住むアパートの前で「C・ホルト」という名前の下のボタンを押し…。
カーヴァーの作品は、その書き出しがどれもいいと訳者の村上春樹が書いているが、それに劣らず話の結び方もいい。この作品の終わり方もとてもお洒落。また、こんなところからタイトルを付けるなんて…。
(村上春樹訳/中央公論社『頼むから静かにしてくれ─レイモンド・カーヴァー全集1』所収)
                           (2004.6.19/B)

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