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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1983年(First Prize)
レイモンド・カーヴァー
「ささやかだけれど、役にたつこと」


アン・ワイスはショッピングセンターまで車を走らせ、週明けの月曜日に催す息子スコッティーの誕生パーティのために、パン屋でケーキを注文した。パン屋の主人はあまり愛想のいい人間ではなく、必要なこと以外話さない。彼は彼女に「月曜の朝に」と言い、彼女は“じゃあお願いします”と言って家に帰った。
月曜の朝、スコッティーは友達と一緒に歩いて学校に向かう。その途中、交差点で車に跳ねられてしまう。スコッティーは自力で家に帰り、友達はそのまま学校に行ったが、スコッティーはその後、また具合が悪くなってしまう。救急車を呼んで病院に急ぐアンとスコッティー。あわてて会社から駆けつける夫のハワード。スコッティーはそれから長い間目を覚まさず、午後に予定していた誕生パーティはもちろん開かれなかった。
“じきに目を覚まします”という医師の言葉を聞いて、ハワードは一度家に帰ることにした。家に帰ってみると、電話の音が何度も鳴り続けている。受話器を取ると、相手は名前も名乗らず、「ケーキ」「16ドルのケーキ」と訳の分からないことを言っている。それはパン屋の主人からの電話だったが、アンはケーキのことをすっかり忘れてしまい、ハワードがそのことを知る由もない。また、パン屋の主人もスコッティーが事故に遭って大変な状況にあるということを知らない。パン屋の主人はそれから何度も電話をかけ、ハワードとアンはそれを悪質な嫌がらせと勘違いしてしまう。
スコッティーの容態は、医師の予想に反して少しも快方に向かわず、ハワードとアンの不安はどんどん増してくる。手術をすることになり、にわかに慌ただしくなる病室。その時、ふとスコッティーが目を覚ましたのだが…。
ハワードとアンがパン屋に行って、焼きたてのパンを頬張りながら、店の主人と過ごす時間。彼が二人にかける言葉。人はこうして人生の道を歩んでいくのだろう。
(村上春樹訳/中公文庫『CARVER'S DOZEN─レイモンド・カーヴァー傑作選』他、中央公論社『大聖堂─レイモンド・カーヴァー全集3』など所収)
                           (2004.4.29/B)

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