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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1955年
ジョン・チーヴァー「ニューヨーク発五時四十八分」


ニューヨーク郊外の町、シェイディー・ヒルに住むブレイクは、家路に着くため会社を出た。その時、エレベーターの前に女性が立っている姿を見つける。彼女の顔には“嫌悪と思いつめた表情”がはっきりと出ていて、彼は一瞬自分を待っていたに違いないと直感したが、そのまま彼女を無視して向きを変えて歩いていった。
急行の出る時間までにはまだ余裕がある。ブレイクは市内をぶらついていたが、ある時、窓ガラスに映る彼女の姿を認めた。彼女は彼の後をつけてきていたのだ。彼女は何をするつもりなのだろう。危害を加えるつもりなのかもしれない。殺そうというつもりかもしれない。彼は彼女を上手くまくにはどうすればよいかをひたすら考えながら歩いた。そして男性専用のバーを見つけた。“なんだ、簡単じゃないか!”
以前、ブレイクは秘書を一人探していたことがある。その時、人事係がよこしたのが彼女だった。彼女は仕事ができた。時間もきっちり守り、タイピストとしても優れていた。しかし、彼がどうしても気にかかることがひとつあった。それは彼女の筆跡だった。
彼女が彼の下で働くようになってから3週間ばかり経った頃、二人して残業で遅くなってしまったので、ブレイクは彼女を飲みに誘った。その時、彼女は自分の家にウィスキーがあるのでと言ってブレイクを誘った。そして二人は関係をもった。彼が服を着て、髪の手入れをしている時、化粧台の上に彼女の書いたメモがあった。──その翌日、ブレイクは彼女が昼食に出ている間に彼女をクビにして、その日以来、彼女が彼を訪ねてきても交換手に取り次がないように命じていたのだった。
さて、ブレイクはバーで二杯目のギブソンを飲んでいた。急行列車にはすでに乗り遅れていたが、五時四十八分発の普通列車に乗ればよいと思った。外にはもう彼女の姿がなかった。 彼は普通列車に乗り込んだ。馴染みの顔が何人かいた。シェイディー・ヒルに向かって走る列車。彼はいつもの車窓を見ていた。その時、誰かが彼に声をかけた。
「ブレイクさん」。
彼は声のあった方を見上げると、そこには彼女が立っていた。彼女は「坐ってもいいでしょうか?」とブレイクに聞き、彼の横に座ると…。
シェイディー・ヒルに住む人たちの、日常生活の中で起こる事件を扱った作品群のひとつで、チーヴァーお得意の代物。話の展開といい、心理描写といい、やっぱりチーヴァーはいいなと思ってしまう。早くチーヴァーの翻訳短篇集が出てくれないものだろうか。
(徳永暢三訳/荒地出版社『現代アメリカ作家集(下)』所収)
                      (2005.2.21/B)

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