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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




2002年
アンソニー・ドーア「ハンターの妻」


冬になるとすべての物を凍らせるモンタナの山奥でハンターとして生計を立てる男。彼が妻に出会ったのは1972年の冬のことだった。彼女は奇術師の助手をしていて、教会に巡回マジックショウをしにきていた。当時彼は30歳、彼女は16歳。身寄りのない彼女を見た途端、これまでなににも感じたことのない美しさを感じ、それ以来、3年がかりで口説き落とした。
夫婦となった二人は、日中でも零下25度を上回らないという厳寒のモンタナで冬を過ごしたが、ある日、彼はそこで妻に信じられない能力が備わっていることを知る。その能力はハンターである彼にとっては、苦痛以外の何ものでもないものだった。どうしてもその能力を信じることができず、彼女につらくあたる彼。そして二人が結婚してから5年経ったある日、彼女は南に向かって車を走らせたきり、二度と戻っては来なかった。
…それから20年の年月が流れた。彼がテレビを観ていると、インタビューを受けている妻が画面に映った。別れたあの日以来、彼女は自身の特殊な能力を使って世界各地を巡り、全米でも有名になっていたのだ。58歳になった彼は彼女に手紙を書いた。そして1週間後、便箋と共に1枚の飛行機のチケットが同封された手紙が届く。「あさってシカゴに行きます。…どうぞいらしてください。お手紙ありがとうございました」
20年ぶりに再会を果たした二人は、長い間離ればなれになっていたそれぞれの思いを、お互いに通い合わせることができるのだろうか。
何よりもまず、1973年生まれという作者の若さ、そしてこれが作者のデビュー作であるということに驚かされた。この若さでこれほどまでに繊細かつ醸成された“大人”の物語を描くことができるのだろうか。短編集の表題作である『シェル・コレクター』しかり。これから出される作品が楽しみな作家だ。
(岩本正恵訳/新潮社『シェル・コレクター』所収)
                           (2004.7.20/B)

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