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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1960年
ハーバート・ゴールド「愛してるとか好きだとか」


ある一組の夫婦が離婚という大きなプロセスを踏む際にぶち当たる、様々な葛藤や障壁を描いた物語。
10年に及んだ結婚生活がまるで嘘だったかのように、シェイパー夫妻の仲は冷えきってしまっていた。今唯一、気がかりなのは二人の間に授けられた娘たち。子供は妻と暮らしているが、夫はたまに会う彼女たちに妻との仲を問いただされる。
「ママが、パパはもうママを愛していないんだって言ってたわ」
「愛してないよ。でもパパはママが好きだよ」
どうすれば彼女たちの母親を愛することなしに彼女たちを愛することができるか。それが彼の目前の問題だった。
“パパとママは別々に暮らさなきゃいけない。お前たち二人がケンカをしたら、機嫌が直るまで別々の部屋に入ってるだろ”と言って分かってもらおうとする彼に、娘は“じゃあ、いつパパたちの機嫌は直るの?”と聞き返す。
二人の仲が元に戻るのであれば、こうしたいざこざも一つの過程として考えられるが、今となっては、修復不可能な域まで達してしまっているのだ。
彼が何を言っても、半ばヒステリックぎみに応える妻。
「わたしに手を触れたら、裁判所から禁止命令を出させるわよ」
「わたしのことを“お嬢さん”なんて呼ばないで。大きらいよ!」
「さっさと出てってよ。…男の腐ったの!」
「わたしの目の前から消えていって!」
夫にも妻にも新しい恋人がいる。しかし、この後、子供たちはどうなるのだろう?そんな想いが夫の脳裏をかすめるのだった。
日本でも増加の一途をたどる離婚について、当事者である二人(夫と妻)と、それに巻き込まれる子供の感情を厳しい調子で描いている。
父と会った際、6歳になる上の子供が言う。
「ああ、もうあたし、愛してるとか好きだとかってことば、あきあきしちゃったわ!」
物語のなかで子供たちが登場するシーンはそれほどないが、彼女たちの心の内を考えると大人の身勝手さをつくづく感じてしまう。
(渥美昭夫訳/白水社『現代アメリカ短編選集II』所収)
                           (2004.5.27/B)

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