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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1946年
パトリシア・ハイスミス「ヒロイン」


ルシール・スミスはスーツケースまで持ち込んで、クリスチャンセン家の住み込みナニー(保母)募集の面接試験に臨んだ。
「これまでにナニーの経験は?」と聞くクリスチャンセンに、「わたくし、これまで七ヵ月間ニューヨークのドゥワイト・ハウエル夫人のお宅でメイドをしておりましたの」と答えるルシール。子供のいる家で働きたいと常々思っていたと言う。
夫妻に気に入られ、その日から働くことになったルシールは、夫妻の子供であるニッキーとエロイーズにも気に入られる。子供たちに“前のナニーよりも好き”と言われるほどだ。そんな彼らの気持ちがルシールはとても嬉しかった。
子供のためにいろいろしてあげたい、もっと親切にしてあげたい、一日中子供たちと一緒にいたい…。半ば度を越しているともいえる、子供たちに対するルシールの奉仕ぶり。クリスチャンセン夫妻は、そんなルシールを少し神経質すぎると思うのだった。
しかし、そのルシールの性格が仇となってしまう。彼女には遺伝と思われる、ある秘密があったのだ。
『見知らぬ乗客』や『太陽がいっぱい』の著者として知られるハイスミスが、得意のサスペンスタッチで描いた作品。奉仕の精神はこれほどまでの粋に達してしまうものなのだろうか。どんどん複雑化している昨今の事件を見ている限り、このフィクションが単なる絵空事だとは言えないかもしれない。
(小倉多加志訳/ミステリアス・プレス文庫『11の物語』所収)
                      (2005.04.21/B)

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