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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1938年(First Prize)
アルバート・モルツ「この世でいちばん幸せな男」


ジェシィ・フルトンはミズーリ州カンサス・シティから二週間ものあいだ歩き続け、ようやくオクラホマ州タルサにたどり着いた。目的はこの町にいる義兄のトム・プラッケットにある願いを聞いてもらうことだ。
ジェシィは無事にトムのいる事務室に来られたが、トムはなかなか戻ってこない。彼は今にも泣けてきそうな心持ちだったが、痛む足を休めるのにはちょうどいい機会だった。
その後、しばらくしてトムが戻ってくる。彼はちらりとジェシィを一瞥したがそれだけだった。彼にはみすぼらしい格好をしたこの訪問者が誰だか分からなかったのだ。ジェシィの風貌は、5年ぶりという時の隔たり以上に変わってしまっていたため、それも無理のない話だった。
「俺、ジェシィ・フルトンなんだ」と言っても「はあ?」の一言。「エラがあんたによろしく言ってたよ」という言葉に、じろじろと観察をして初めて、トムは彼が本当にジェシィであるということを認めた。
それから、お互いにとって苦痛以外の何ものでもない会話がしばらく続いたが、その後ジェシィはいよいよ本題に入った。
「助けてほしいんだよ」…。

トムに「こんなに落ちぶれ果てた人間を見たことがない」と思われてしまうほどどん底の生活をしているジェシィが、愛する妻のために、子供のために、どんな危険にも立ち向かって今自分たちが置かれている境遇から抜けだそうと決意し、涙ながらにトムに訴える姿は心を打たれる。悪いのは時代なんだと思いながらも、なくしかけている自分のプライドを取り戻そうとするジェシィに未来はあるのか。ジェシィにはずっと“この世でいちばん幸せな男”であってほしいと願う。
(岡節三訳・蔵原惟人監修/新日本出版社『世界短編名作選アメリカ編』所収)
                           (2004.10.24/B)

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