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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1942年
カーソン・マッカラーズ「騎手」


騎手は食堂の戸口までやってくると立ち止まり、壁を背にして辺りを見回した。そして隅のテーブルで食事をしている三人の男たちを見つける。三人の男というのは、調教師のシルヴェスター、賭け屋のシモンズ、そしてこの日の午後に騎手が乗った馬のオーナーである富豪だ。彼らもすぐに騎手がいるのに気付く。最初に騎手を見つけたのはシルヴェスターだったが、彼は騎手と同席になるのを明らかに嫌がっている。シモンズもシルヴェスターと同じで、騎手のことを「あいつは頭がおかしい」ともらす。事情を知らない富豪は何があったのか二人に聞いてみると、どうやら以前あったレース中の事故が関係しているらしい。事故にあった騎手は、彼と同じアイルランド系で、とても仲が良かったという。その騎手は事故で片足と腰の骨を折る大ケガをしたそうだ。
しばらくして、戸口に立っていた騎手は、三人が座っているテーブルにやってくると、シルヴェスターと富豪の間にイスを持ってきて腰をおろした。そして三人の制止を振り切りバーボンを注文する。
「自重するんだ。自分でもわかってるだろう、自重が必要だってことは」
騎手はこわばった冷笑を浮かべながらテーブルに置いてあった料理を見やり、テーブルの中央に飾っている薄紫色の薔薇を見つめていた。そしておもむろに口を切った。
「マッグワイアって名前の人はおぼえてないだろうね?」………………
マッカラーズの作品は、どれも映像的な印象を受ける。年を重ねるうちに彼女はどんな作品を生み出していったのだろうか。そう思うと、作家としてまさにこれからという時期に、この世を去ってしまったのが大変悔やまれる。
(鳴海四郎訳/早川書房『ニューヨーカー短篇集III』他、白水社『悲しき酒場の唄/騎手』、英宝社『哀れなカフェの物語・サラサの靴』など所収)
                           (2004.3.7/B)

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