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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1981年(First Prize)
シンシア・オジック「ショール」


ホロコーストを生き延びたポーランド人女性ローザと乳飲み子マグダ、14歳の少女ステラの悲しい物語。
体が凍えてしまうような寒さの中、隊列を乱さないように注意して歩くローザとステラ。マグダはショールにくるまれ、見つからないようにローザの胸の中に隠れている。マグダはローザの乳首をくわえているが、じゅうぶんな乳が出るわけではなく、時折泣き叫ぶ。しかし、終いには泣くのもやめ、ショールの端をくわえるようになった。
それから三日三晩、くわえたショールがミルクがわりとなり、マグダは生き続けた。ローザの乳がなくなって以来、一言も発さなくなってしまったマグダだったが、自分で歩けるようになるまで時は流れてくれた。
しかし、劣悪な環境で収容所生活を送っていたある日、不幸な出来事が起きてしまう。ステラが、あまりの寒さからマグダのショールを奪い取ってしまったのだ。“魔法のショール”がなくなった今、ローザはマグダの死期がいつ訪れてもおかしくないことを知っていた…。
この後の物語内容を淡々と書き連ねるのは、この作品については得策ではないように思う。極めて詩的でメッセージ性の高い文章を、約めて簡単な文章にしてしまうのは抵抗がある。本の帯に付されたウィリアム・エイブラハムズの言葉の中に、“わたしはためらいなく、オジックを現代アメリカの最も偉大な短篇作家三人のうちに挙げる”とあるが、先に書いた「メッセージ性」という意味においては、そう言われるに充分値する作家だといえるだろう。
(東江一紀訳/草思社『ショールの女』所収)
                           (2003.8.14/B)

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