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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1940年
マージョリー・K・ローリングズ「ペリカンの影」


ある一組の夫婦の物語。
エルザ・ウィティングトンは大学を卒業後、「ホーム・ライフ誌」の特集記事担当編集者として就職。一方、ハワード・ティフトンは科学博士であり、またセミ・サイエンス物を得意とする作家だった。エルザはかねてからハワードの作品の熱烈なファンだったということもあって、「ホーム・ライフ誌」とハワードとの連絡係となり、そんな縁で2人の交際がスタート。結婚に至る。
ハワードは自他ともに認める完全主義者で、野菜のゆで方やソースの味加減なども、顕微鏡を通して研究するような綿密さでこだわった。おかげで、下男兼コックのジョーンズはたまったものではない。
エルザは結婚する際に躊躇なく職を辞したが、彼女はそのことについては自分の持ち前の慎重で知的な選択力によって、ついに立派な男性と巡り会えたのだと思っており、何の未練もなかった。かつての上司である「ホーム・ライフ誌」編集長のメイ・マローに宛てた手紙にも、「…私は、もちろん、この上なく幸福で──」と書いている。
そのように幸せなエルザの目の前をペリカンが一羽、海岸線沿いに羽ばたいていく。エルザに訳もなく強い苛立ちと嫌悪感を抱かせるペリカンの影は、何を表しているのか。「ああ、勝手にするがいいわ!」と、彼女は彼(鳥)にむかって叫ぶのだった。
(高橋泰邦訳/早川書房『ニューヨーカー短篇集I』所収)
                           (2003.11.3/B)

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