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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1985年
アイリーン・レイモンド「ジャックに賭ける」


ニーナは編集アシスタントとして働いているが、彼女の夫ジャックは現在失業中。端から見るとすっかり主夫生活を楽しんでいるようにみえるので、本気で再就職する気があるのか疑ってしまうほどだ。週に2度、会社の昼休みに食事を共にするアメリアは、5カ月前に3度目の結婚をしたばかりで、自分が至福の状態にいるからか、ニーナに「あんたは自分が思っている以上に女としての値打ちがある」と言って、セクシーな下着を買わせたり、最初と2度目の結婚生活で着ていたネグリジェを、「要らないから」と言って全部くれたりする。ニーナの周りにいる他の女友達もみんな、「外で働こうとしないジャックはまともじゃない」と口を揃えるが、そんな時、当のニーナはいつも就職口をみつけるのって大変なのよ、とジャックを弁護するのだった。
ところが、家でジャックのある行動を見た途端、ニーナはアメリアがいつも口にしている言葉を思い出し、玄関のドアを飛び出す。行くあてもなく通りを歩くニーナ。角のバーに入ってカウンターで3杯目のウォッカを飲んでいると、隣のスツールに22、23歳の見知らぬ若い男性が腰掛けた。…。
女性が生活費を稼ぎ、男性が家を守るニーナ&ジャック夫妻。世間ではダメ夫にうつるジャックに、それでも賭けてみたいと頑張るニーナ。「主夫」という言葉は、今でこそそれほど違和感はないが、これが1985年の作品と聞くと、当時すでにこうした新しい夫婦生活の形(意識)がアメリカにはあったのかとひしひしと感じてしまう。
(干刈あがた・斎藤英治共訳/新潮社『80年代アメリカ女性作家短篇選』所収)
                           (2004.7.11/B)

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