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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1935年
ウィリアム・サローヤン「五つの熟した梨」


僕にはポラード先生がまだ生きているなら、ぜひ分かってほしいことがある。それは僕が小学2年生の春に起こったことだ。
当時、学校から少し離れたところに塀をめぐらした中庭があって、そこには梨の木が植えられていた。僕はその木にすごく関心を持っていて、葉のない頃から、花が咲き、散り、実がなり熟すまで、何週間もずっと眺めていた。しかしそのうちに僕は梨を取りたくなった。そして梨の木の何本かの枝は塀の外に出ていたので、はみ出ている梨は取っても別に構わないと思った。だからある日、学校の休み時間に“梨の木の所に行ってくるよ”と友達のアイザックに言った時、彼に“それは泥棒だよ”と言われても僕はそれが盗みだとは思わなかった。
梨を取ろうとしている最中に、休み時間の終わりを告げるベルが鳴ったけれど、梨を持って帰ったら遅刻した正当な理由になると思った。学校に着いて“梨を取っていました”とみんなに言った時に、みんなで僕を泥棒扱いした時は、僕自身もほとんど泥棒と思ったけれど、でもやっぱり違った。先生に“梨は5つ取って、全部食べてしまいました。1つはその場で、あとの4つは学校に持って帰ってここで食べました”と言うと、先生は「食べたのか?」と言った。あの時の先生の顔は怒っているようだった。でも僕は何も悪気があって盗もうとしたんじゃない。梨という生命の本質を知りたかっただけなんだ。
生命の果実である熟した梨の命を自分の体で実感したいという僕。多感な子供の心の内をみずみずしく描いている。
(斎藤数衛訳/英宝社『笑うサム・心高原にあるもの』所収)
                           (2004.5.31/B)

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