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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




2001年
デイヴィッド・シックラー「スモーカー」


ダグラス・カーチェクは西97丁目とブロードウェイの角にある聖アグネス高校で上級英語を教える教師。
12年生の担当だが、なかでも彼が受け持つ特別授業の受講生6人は、みんな“並外れた輝きを放っているもっとも聡明”な生徒ばかりだった。ニコール・ボナーはその6人のうちの1人だ。178cmと背が高く、成績は完璧なオールA。“直線的にすぱっとカットした黒髪”と青い目をもつ、“危険なくらいそそられる”生徒だった。
ある日、ダグラスが二コールに志望大学を聞くと、彼女はプリンストンに入りたいと言っていた。彼は彼女ならどこにでも合格するだろうと思っていたが、事実、合格した。
教職員休憩室にやってきて、「プリンストンに合格しました」と微笑みながら話す二コール。
ダグラスは一瞬、彼女を抱きしめている自分を想像したが、実際は彼女の方をポンとたたいて、「それはすばらしい…おめでとう」と言っただけだった。
その時、二コールはダグラスがプリンストンに彼女の推薦状を書いてくれたお礼に、両親が食事に招待したいと言っている旨を伝えた。
「…今週の木曜日、どうぞいらしてください」
「ご親切に。しかし、その必要はないよ」
「父の手作りのニョッキをごちそうします。先生はニョッキがお好きだって、父にも話したんです」
「…きみがプリンストンに合格したことを私はとても誇らしく思っているが、だからといって、きみが─」
礼拝の始まりを告げる鐘が、そうした2人の会話を終わらせ、ダグラスは食事の招待を受けることになった。
「わたしたちが住んでいるのは、<プリエンプション>というアパートメントビルよ。西82丁目とリバーサイド・ドライブの角」

木曜日。ダグラスは<プリエンプション>に着いた。ドアマンがダグラスをエレベーターまで案内する。そして最上階のペントハウスへ。
エレベーターを降りると、ニコールがいた。“体のラインや凹凸に吸い付くような完璧な仕立ての”黒いシルクのドレスを着て…。
そして、彼女と彼女の両親とともにペントハウスの中へ。そこは“レックス・ルーサーのような邪悪な都会人が暮らしている秘密の隠れ家”のようだった。
有名弁護士であるニコールの父サムソンのペースで進行される夕食の場で、教師としての立場を保とうとするダグラス。しかし、サムソンはダグラスが思いもしなかった申し出をして……。

この作品は確か映画化されているはずだが、観たことはない。ハイブラウでおしゃれな物語と言おうか。格好良すぎて、物語のその後が心配だ。
(中谷ハルナ訳/早川書房『マンハッタンでキス』所収)
                           (2006.12.21/B)

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