1963年
テリー・サザーン「地図にない道」
2、3日ちょっと前に知り合った友達2人とメキシコ・シティにいた時のこと。わたしは地図でおもしろい道を見つけた。その道はアホトルという街の南のはずれにあるのだが、この道は、手元にある古ぼけた地図に載っているだけで、メキシコ政府発行のちゃんとした地図には影も形もない。わたしたちは、ちょうどその時、車でメキシコ・シティから出ていこうとしているところだったので、その道の先にある2つの街、コーパス・クリスティとサン・ルイスをめざすことになった。
わたしたちは地図を見ながらひたすら目的地をめざした。“イカれた道”を突き進み、何とか無事に1つめの街、コーパス・クリスティに到着した。
そこは一見、古き西部の街といった趣を持っているように思えたが、わたしは重要なことに気付いていなかった。舗道の影に隠れて、あたり一面に大勢の人間がずらりと並んでいるのだ。おそらく200人はいる。彼らはいったい何をしているのだ。もうすぐ午前2時というこんな真夜中に…。
著者テリー・サザーンは『キャンディ』や『イージー・ライダー』などで日本人にもよく知られている作家。同じオ・ヘンリ賞受賞作品の中では、レイ・ブラッドベリの「発電所」（1948年受賞作）、その他でいえば、スティーブン・キングの作品にどこか通じるところがあるように思える。
（松永良平訳／国書刊行会『レッド・ダート・マリファナ』所収）
（2006.6.14／B）
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