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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1976年(Special Award for Continuing Achievement)
ジョン・アップダイク「別居」


リチャード&ジョーン・メイプル夫妻は、結婚生活を解消することに決めていた。
しかし、二人には最後の大仕事が待っている。それは“別居する”という彼らの意志を、
四人の子どもたちに伝えることだ。
リチャードはイースターの時に家を出ようと思っていたが、
それを時期尚早だと考えるジョーンは、綿密な計画を立てていた。
リチャードは妻の考えに従うことにした。

いよいよという時に、取り乱してしまうリチャード。
そして、両親の話に四者四様の反応を見せる子どもたち。
世間でいくら離婚が“日常化”しているとしても、当事者たちにとっては“別居”は大事件である。

「パパたちがうまく行ってなかったのなら、もっと早くぼくたちにそう言うべきだったよ」と怒る息子に、
リチャードは
「ぼくたちはうまく行っているのだ。それが問題なのだ。だからぼくたちにも分からないのだ」
と言うが、後が続かない。
“ぼくたちがお互い愛していないということが、とつづくはずだったが、それは言えなかった。”

…そして夜。
彼の傍らで眠っていて、少し目を覚ました妻に、
「ジョーン、なにもかも元通りにできるものなら、そうするんだけどね」
と、リチャードが言った時、彼女は答える。
「どこから始めると言うの?」
“たしかに始めようはなかった”

どうして別れなければいけないのか、別居しなければいけないのか。
決定的な理由がないまま、目に見えない大きなうねりに巻き込まれて「別居」という方向に向かう二人。
親が子どもたちの成長を感じた時、二人は“夫婦”としての契約を解消し、
あたかも、それが初めから決まっていたかのように、人生をリセットして違う道を歩んでよいのだろうか。
夫婦の契約を交わした時、それはすでに予定に組み込まれていることなのだろうか。
(大津栄一郎編訳/岩波文庫『20世紀アメリカ短篇選(下)』所収)
                           (2007.10.1/B)

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