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O・ヘンリ賞受賞作品を読む




1935年
ジェローム・ワイドマン「父は闇に想う」


「父には変わった癖がある。暗闇のなかで、独りぽつねんとすわっているのが好きだ」という書き出しで始まるこの作品に登場するのは、ぼくと彼の父の二人のみ。夜に灯りを消し、独りパジャマ姿で台所のイスに座って黙想している父の姿を見守っている“ぼく”を描く。
物語にストーリー性があるわけではなく、ましてや興味を引くような事件が起こるわけでもない。作品の舞台である夜の台所がたぶんそうであるように、とても静かに物語は進行する。
彼(父)はなぜ眠らないのか?夜の台所でいつも何を考えているのか?
事あるごとに尋ねるぼくに対して、いつも「なんでもないよ」と答える父。今夜こそは本当の理由を、今夜こそは父の秘密をと思っているぼくに、彼は「ただ心が安まる」とのみ答えるのだった。
そんな父を見ているうちに、ぼくはうれしくなったり、喜びを感じたりするようになる。
「『おやすみなさい、お父さん』とぼくは言う。『おやすみ』と父は言う」。そして物語はジ・エンド。
これぞ雑誌“ニューヨーカー”らしい作品といえると思う。この作品の根底に流れるのは“ささやかな幸せ”ということになるのだろうか?評価が二分されそうな作品のように思うが、作者であるワイドマンは、下記の所収文庫内にある常盤新平氏による解説に「劇作家としてピュリッツァー賞受賞」とある。筆力は折り紙付きだ。
(常盤新平訳/旺文社文庫『フランス風にさようなら─ニューヨーカー短篇集』、新書館『ニューヨーカー・ストーリイズ』など所収)
                      (2004.12.22/B)

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