P・G・ウッドハウスを読む



「バーティ君の変心(Bertie Changes His Mind)」(1922)


今晩のバーティはいつもと違って、どこか塞いでいる様子。この間までインフルエンザにかかっていたので、そのせいなのかとジーヴスが聞いてみると、また悩みがあるという。
「…お前は観なかったか、『何とかのかんとか』という芝居?」
「いえ」
「何とかいう劇場でやっている。ぼくはゆうべ観た」
その芝居は、主人公の男の前に突然小さな子供が現れて、あなたの娘ですと言う。その後“男は子供の手を取っていっしょに世の中に出て行く”という筋で、バーティはこの芝居に触発されてしまったらしい。バーティは子供を養子にもらうことができないか、来週帰ってくる姉の三人の娘を引き取り、一軒家を購入して一緒に住めないものか真面目に悩んでいるというのだ。
ジーヴズは、まずはブライトンへ行ってお体をゆっくり休めましょうと言って、彼をなだめるのだった。
さて、ブライトンに来てまだ三日目だというのに、バーティはすっかり飽きてしまい帰ることになった。そしてロンドンに向かう道中で事件が起こる。若い女の子が大きな身振りで車に向かって合図をしていたのだ。ジーヴズはブレーキをかけて車を止める。
「どういうつもりなんだ、ジーヴズ?」
「少し先のほうで若いご婦人がしきりに合図をなさっておられますので」
彼女に事情を聞くと、ブライトンに遊びに行きたくて許可なく学校を抜けだしてきたが、学校に戻りたいので車に乗せてほしいということだった。
だが、このまま帰るのでは校長先生に大目玉を食らってしまう。そのため、ジーヴズの発案でバーティが彼女の父の友人に扮して、彼女をドライブに連れ出したということで辻褄を合わせることにした。
学校に着いた彼らだったが、見事に作戦は成功。しかし、ジーヴズのいじわるもあり、バーティはとんだ試練を受けるハメになってしまうのだった。
本作品では珍しくジーヴズ自身が物語の進行役となって話を進める形をとっている。数あるジーヴズものの中でも人気がある作品で、わが国でも何度も邦訳されている。2005年5月に刊行された『ジーヴズの事件簿』(文藝春秋)にも収められている。

★所収本
・岩永正勝・小山太一共訳/文藝春秋『ジーヴズの事件簿』(バーティ君の変心)
・森村たまき訳/国書刊行会『それゆけ、ジーヴス』(バーティー考えを改める)
・乾信一郎訳/東京創元社『〈世界大ロマン全集6〉地下鉄サム』(君子豹変談)
・乾信一郎訳/東成社『専用心配係』、同訳/「新青年」昭和7年新春増刊号(君子豹変譚)
・梶原信一郎訳/「新青年」大正15年7月号、同訳/博文館<新青年叢書>『どもり綺譚』、同訳・森下雨村編/<探偵傑作叢書第五十編>「怪奇探偵 探偵名玉集」、同訳/「新青年」昭和13年5月増刊号、訳者不詳/「宝石」昭和28年6月号(女学校事件)

                      (2005.8.31/菅井ジエラ)

 

 

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