『ちびくろ・さんぼ』

ヘレン・バンナーマン文・フランク・ドビアス絵/光吉夏弥訳(岩波書店)


 先日、古書店で本を探していると、偶然『ちびくろ・さんぼ』を見つけた。昔、差別問題で物議を生んだ一冊だ。その後発売中止となったが、根強いファンがいて発売再開を求める声が今も強い。そういう私自身、子供時代『ちびくろ・さんぼ』のファンだった。古書店ですぐに、子供のためというよりも自身の懐かしさのために、本を買い求め読んでみた。
「さんぼのお母さんは“まんぼ”という名前か、お父さんの名前は“じゃんぼ”だったっけ?」と遠い記憶の紐をたぐり寄せるように読んでいった。そして虎が木の周りをぐるぐる回ってバターになってしまうシーン。「懐かしいなぁ。面白かった」とページをめくると、『ちびくろ・さんぼ2』(岡部冬彦・絵)とある。「えっ?もうひとつ話があったっけ?」と懐かしさが二倍になった。
現在でも「インディアン」や「エスキモー」といった差別用語が巷にあふれている。著者自身、この本によって差別を助長させようとは思っていなかったはずだ。名作の発売再開が一日も早く実現するよう願っている。


                      (2003.8.3/菅井ジエラ)

関連本
『トラのバターのパンケーキ─ババジくんのおはなし』ヘレン・バンナーマン(評論社)

※先日、「ちびくろ・さんぼ」の一話目のみが上記岩波版と同じ体裁で復刊された。版権の関係からか、残念ながら「ちびくろ・さんぼ2」は収載されていないが、復刊されてとにかく嬉しい。多くの人が待ち望んでいたのか、街の書店では、店内の売上げ人気ランキングで堂々2位になっていた。
                      (2005.5.2/菅井ジエラ)

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