P・G・ウッドハウスを読む



「ちょっとした芸術(Jeeves and the Spot of Art)」(1929)


ダーリア叔母の家で昼食をとっている時のこと。バーティーは叔母に招待されていたヨット・クルーズを断る。その理由はある女性に恋をしてしまったからだ。彼が恋するグラディスという名の女性は画家で、この間もバーティーの肖像画を描いてくれたという。彼はその画をアパートにかけている。しかし、彼にはリューシャス・ピムという恋敵がいて、クルーズに出かけていると、その間にこの男にグラディスを取られてしまうというのだ。ダーリア叔母さんは、そんなことを言っていてもあなたはきっとクルーズに来ることになるでしょうと、半ば馬鹿にしたよう。ジーヴスがいつものようにうまく取り図ると思っているらしい。
その日の午後のこと。バーティーの家にグラディスが遊びに来ることになっていたが、バーティーが家に戻った時にはすでに彼女は帰った後。どうして帰ってしまったのかジーヴスに聞いてみると、ある事件が起こったために彼女は帰ったという。家の前で彼女の運転する車が人をひいてしまったため、帰らせたというのだ。そして怪我人は、家のベッドで休ませているという。その怪我人こそ、他ならぬピムだったことから、話がとんでもない方向にいってしまって…。
事故のことを聞いてかけつけたピムの姉や、彼女の夫で有名なスープ会社の社長でもあるスリングズビー氏を巻き込み、話はドタバタ劇の様相に。窮地に追い込まれたバーティーを救うのはやはりジーヴスしかいなかった。グラディスとの恋の行方は?バーティーの運命は?そして叔母が予言したようにバーティーはクルーズに行くことになるのか。 毎回かわいそうな役回りのバーティー。いつもジーヴスに遊ばれていると言ってもいいすぎではないような…。

★所収本
・澤村灌・高儀進編、高儀進訳/イギリス・ユーモア文学傑作選「笑いの遊歩道」(ちょっとした芸術)
・乾信一郎訳/東成社『天晴れジーブス』(傑作罪あり)
・岩永正勝・小山太一編訳/文藝春秋『でかした、ジーヴス!』(ちょっぴりの芸術)

                      (2005.3.21/菅井ジエラ)

 

 

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