P・G・ウッドハウスを読む



「大歓迎!(The Awful Gladness of the Mater)」
(1925)


ダッドレー・フィンチの恋人、ロバータ・ウィカムの悪い癖は、人を平気で待たせること。今日もホテルのロビーでランチを食べる約束をしていたが、待ち合わせの時間からすでに40分も遅れている。ダッドレーはいい加減諦めて帰ろうと外へ出ると、そこで従兄弟のローランド・アトウォーターに出くわした。
「君! まだ濠洲に行かないのかい?」…
「まだだよ」
ダッドレーは濠洲(オーストラリア)に行くことになっていた。しかし、それもローランドと出会ってから取りやめにしようと決めていたのだ。
「イヤ、その女と云うのがね、素晴らしいんだ。君も知っているだろう、ロバータ・ウィカムと云うんだよ。」
ダッドレーがそこまで話すと、ローランドの顔色が急に変わる。
そこにロバータがやってきた。
「随分、待って?」
「僕も今来たばかりなんですよ。」
「マアよかったわ……でローランドさんは?」
ローランドは彼女と挨拶を交わしただけで足早に帰ってしまう。ダッドレーは彼の行動を不思議に思っていると、彼女から告白された。
「私達一時、大の仲良しだったのよ。だけどあの蛇事件以来……」
「蛇事件?……」
蛇事件。ある日、ローランドがロバータの実家に遊びに行った際、『蛇』が原因で彼女の家から這々の態で逃げ出したことがあり、それ以来、彼は彼女を目の敵にしているという。
そして、次はダッドレーの番。彼も彼女の実家に行くことになった。
「私今晩行くのよ、一緒に行かない?」
…「あなたさへよけりゃ、僕は汽車で行く事にしましょう。」
かくして、ダッドレーは彼女の実家のドアを叩く。何か起こりそうな予感が。ダッドレーの身に何もなければよいのだが。
数あるウッドハウス作品の中でも、ドタバタ具合は群を抜いているといえそうな作品。これぞウッドハウス! 不運な男を品位を保ちながら描く筆力は、誰も彼に叶わない。

★所収本
・上塚貞雄訳/「新青年」昭和4年3月号、延原謙訳/改造社『世界ユーモア全集2 英米篇』(大歓迎!)
・岩永正勝・小山太一編訳/文藝春秋『マリナー氏の冒険譚』(お母様はお喜び)

                      (2006.2.17/菅井ジエラ)

 

 

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