幻想・怪奇小説を読む



 『黄金の壺』 ホフマン 岩波文庫


ドイツ後期ロマン派の作家ホフマン(1766-1822)によって書かれた幻想物語。
ロマン派的な男女の純愛と孤高の精神が詩情あふれる文章で描かれている。ドイツというお国柄もあって、グリム童話の元になった民話などからの影響も垣間見られる。
さて『黄金の壺』の中身を開けると、
慌てて走っていた大学生アンゼルムスがリンゴ売りのお婆さんにぶつかる所から物語は始まる。結局、青年はお婆さんにリンゴを台なしにさせたお詫びに有り金を全部渡すことになる。
そのお婆さんは、その衝突の後アンゼルムスがガラスの中に閉じ込められることを予言し、その予言をすっかり全部信じ込むかのようにアンゼルムスは生まれてから全くついていない自分の人生を呪い始めるのだった。

アンゼルムスが通う大学のパウルマン教頭が病みきっているアンゼルムスの体調を心配するようになる。パウルマン教頭は将来的にアンゼルムスを宮中顧問官に推薦しようと考えていたからだった。
そんな状況を見計らった書記役ヘールブラントはアンゼルムスは文書管理役リントホルストのところで働くことにさせようと提案するのだった。書記役ヘールブラントはアンゼルムスを追い払って、何とか自分が宮中顧問官の座につき、パウルマン教頭の娘ヴェロニカをものにしようと考えていた。
アンゼルムスは文書管理役リントホルストの屋敷に趣き、文書管理役リントホルストから手渡された本を読むようになると、火の精の物語を現実の話として信じ込むようになる、その火の精の娘ゼルベンティーナに恋するようになる。
パウルマン教頭はアンゼルムスに対して諦めの気持ちを強めるのだが、一方アンゼルムスに恋しているパウルマン教頭の娘ヴェロニカは何とかしてアンゼルムスを助けようとして、幼い頃自分を育ててくれた養母のお婆さんの所に行くことにする。そのお婆さんはアンゼルムスとぶつかり、「おまえはやがてガラスの中に閉じ込められる」と予言したお婆さんだった。しかしヴェロニカの意図とは反して、アンゼルムスと大学、アンゼルムスと現実の溝は深まっていくばかりだった。

注目すべきは、アンゼルムスが文書管理役リントホルストの家で体験するフォスフォルスと百合との場面だ。

                           (2003.12.3/A)

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