幻想・怪奇小説を読む



『オットーと魔術師』山尾悠子


オットーの家のネコが病気になってしまった。何も食べなくなり、このままではひからびてしまうと心配するオットーに、見舞いに来ていたマリコが魔術師のところに連れていけばきっとすぐに治ると薦めた。彼女が言うには、“ウオノメに…ペットの不妊手術まで、なんでも相談にのってくれる…”そうだ。
風が出て、川の上に満月が昇ったその日の夜、オットーは“ジャケットのふところにネコをを入れて”植物園の裏にあるという魔術師の家に向かった。
到着すると、家の中が何やら騒がしく、何かの集まりをしているようだった。オットーは横手の窓から邸の中をのぞき込んでいると、ふいに“フロックコートを着た奇妙な小男”から声をかけられた。
「遅れてきたんですね」……。
今でも根強いファンの多い山尾悠子の手による作品。集英社が少年少女向けに出しているコバルト・シリーズの中に入っているが、大人でも充分楽しめる。この作品は『山尾悠子作品集成』に収載されなかったため、ファンにとっても貴重な作品だといえるだろう。
(集英社文庫コバルト・シリーズ『オットーと魔術師』所収)
                           (2005.5.25/菅井ジエラ)


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