女性作家を読む




久坂葉子『ゆき子の話』


ゆき子から「仔犬をもらったから見に来て」という葉書をもらった私は、早速その次の日曜日に彼女の家を訪れる。仔犬が見たいからではなく、一ヶ月も会っていない彼女と話をしたかったのだ。
とはいうものの、ひっかかることが一つある。常日頃から享楽主義者と自称しているゆき子と仔犬を飼うという行為が、どうも上手く結びつかないのだ。ゆき子に「あなたに仔犬って不釣合みたい」と言うと、「なんだかさみしくなったから、仔犬なんてかってみたい気になったの」とゆき子は答える。会話を進めて行くうちに、ゆき子は職場での悩みを持っていることが判明するのだった。
ゆき子はアメリカ人の上司から、セクハラを受け続けていた。しかし、その上司が転勤することになり、ゆき子は「ざまぁみろ!」と心の中でほくそ笑むのだった。転勤当日、ゆき子たち社員一同は彼を駅まで見送りにいく。苦い思いをさせられていたゆき子にとってその上司との別れは喜びの気持ちで受け入れるべきことだった。ところが、彼が妻との別れを惜しんでいる光景を見たその瞬間、不思議な感情がゆき子の中に芽生えるのだ。そして、彼が汽車の中からゆき子の耳許にささやいた言葉。その言葉がゆき子の念頭から離れなくなってしまうのだった。
こういった小説世界は男性作家がひとりよがりで描くものだと思っていたが、書いているのは女性。女性の心理とはこういうものなのだろうか。ん〜、いつまでたっても女性の心理はわからないですね。
(構想社『新編久坂葉子作品集』所収)
                              (2003.10.16/菅井ジエラ)

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