P・G・ウッドハウスを読む



「ガッシー救出作戦(Extricating Young Gussie)」
(1915)


朝の11時半、バーティは起こされた。アガサ叔母が面会にやってきたのだ。こんな朝早く(!)から訪ねてくるなんて、何か良からぬことがあったに違いない。そう感じた彼は、どう猛な叔母を追い返すわけにもいかず、ガウンを羽織り寝室を出た。
「…あなたにはすぐアメリカに行ってもらいます」
…「でも、なぜアメリカに?」
話は従兄のガッシー・マナリング=フィリップスのことだった。ガッシーが送ってきた手紙によると、彼はニューヨークでヴォードヴィル女優と恋に落ち、彼女と結婚しようと思っているというのだ。ガッシーの母親のジュリア伯母がかつてヴォードヴィル女優だった(それを聞いた時は、とても驚いた)ので、バーティは「マナリング=フィリップス一族の長は永遠にヴォードヴィル女優と結婚しつづける」という呪いでもあるのかと冗談で思ったが、当然アガサ叔母はそんな冗談に聞く耳を持たず、そのような結婚は、一族の誇りとして絶対に認めない。そのため、バーティがニューヨークに行き、二人を別れさせてガッシーを連れ戻してほしいというのだ。
アガサ叔母のほとんど脅迫めいた懇願を聞いたバーティは、他にどうするわけにもいかず、気乗りのしないまま大都市ニューヨークに行ったのだが…。
この作品はバーティ&ジーヴズの記念すべき初カップリング作品だという。だが、本シリーズの他の作品と大きく異なるのは、まずバーティーの苗字が「ウースター」でなく、「マナリング=フィリップス」となっていること。そして、ジーヴズが単なる執事の一人としてしか描かれていないということだ。
ジーヴズが登場するのは、ぐっすり寝込んでいたバーティを起こす場面と、お茶を持って部屋に入ってくる場面の2カ所だけ。セリフもそれぞれ「ミセス・グレグソンがご面会です」、「よろしゅうございます、スーツはどれになさいますか」というだけ。もちろん、灰色の脳細胞が活躍する機会などない。
それ故、バーティが自身で難題を解決しないといけないのだが、結果としてこれはこれで良かったのだろう。ただ、ジーヴズなら、この難題をどう料理したか、結果がとても気になるところではあるが…。

★所収本
・岩永正勝・小山太一共訳/文藝春秋『ジーヴズの事件簿』(ガッシー救出作戦)

                      (2006.7.4/菅井ジエラ)

 

 

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