フィシェ兄弟を読む






「歯医者の選択」


男の歯が痛み出した。
“早く治療してもらわなければ”と思っていた彼は、出勤途中に、運良くある大理石の看板を見つけた。
『歯科医、カルパンチエ』
“今夜でも来てみよう”
そして男は夕方の6時に、医院の前にやってきた。しかし思いとどまる。
“歯医者を決めるのは一大事だ。それを、カルパンチエなどという今までまったく聞いたこともない歯医者に任せてしまってよいものなのか”
悩んだ挙げ句、男は結局入らなかった。
そして1週間後。歯痛がひどくなった。男は薬屋でおすすめの歯医者を紹介してもらうことにした。それで教えてもらったのがマチユという名の医者。その日の午後6時に、男は医院の前にいた。しかし、また例の勘ぐりが出たのだ。薬屋と医者にの間には怪しい関係(協定)があるかもしれない。この歯医者には任せられない。
さらに1週間後。歯痛はさらにひどくなり、我慢できないほどになった。今日こそ、治療してもらわなくてはいけない。男はパリ案内を買ってきて、パリ中の歯医者を調べた。そこで見つけたのがバシュマンという名の歯医者。「レヂオン・ド・スール勲章受章」とある。
“勲章を受章するなんて並大抵の医者ではないはず”
男は肚を決めて、バシュマン先生の治療を受けることにしたのだが…。
さて、男はどうなったのか?
奇をてらったオチはないが、それはそれで楽しませてくれる。
(訳者不明/「新青年」昭和3年夏期増刊号所収)
                (2006.8.21/菅井ジエラ)

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