P・G・ウッドハウスを読む



「伯爵救出作戦(Sticky Wicket at Blandings)」(1966)


今やドナルドソンズ・ドッグジョイの敏腕営業マンであるフレディが、今回ターゲットにしているのは、地元の狐狩りの世話役ファンショー氏。いわば数百匹の総元締めと言える彼を押さえれば、相当の営業数字が稼げると踏んだのだ。ファンショー氏は一見難攻不落の人物のようであったが、我らがフレディはしっかりと策を講じていた。
それは、彼の娘ヴァレリー・ファンショーをうまく味方につけること。美人で知られる彼女はフレディの友人で、彼女はアルザス犬を欲しがっていた。だからアルザス犬をあげる代わりに、彼女から父親にドッグ・ビスケットの話をしてもらったら、ファンショー氏は一切いやとは言わないだろうという計算だった。
「しかしフレディ、こいつはアギーの犬だぜ」
ギャラハッド叔父はその計画をフレディから聞くと、そう言った。フレディの妻であるアギーにだまってそんなことをしたら、彼女はかんかんに怒ってしまう。それをどう説明するというのだ。
「いや、それは大丈夫。ちゃんと手は打ってあります。…この犬は死んだことにして、同じようないいやつを買ってやるんです。それでアギーのほうは大丈夫」

そして、フレディは計画通りにアルザス犬をヴァレリーにあげたのだが、ここで不測の事態が起こってしまう。明後日、アギーが来るという電報がフレディの元に届いたのだ。アギーがやって来た時にアルザス犬がいないと大変なことになる。こうなると、こっそり犬を取り戻して来なければいけない。しかし、どうすれば…。フレディもギャラハッド叔父も電報を読んだ際に驚きのあまり階段から落ちて足を捻挫してしまったので、身動きが取れない。もちろん、事を大きくしたくはない。
そこで、借り出されたのがロード・エムズワースだった。
「…そもそも、大したことを頼んでいるわけじゃない。子供だってできる。…」
こうして、ロード・エムズワースは単身犬を盗み出しにファンショー氏の家に向かったのだが…。
ギャラハッド叔父の悪い予感が当たり、ロード・エムズワースは囚われの身に。身元が分かる前に今度は彼を救出しなければいけなくなり…。

ロード・エムズワースの弟、ギャラハッド叔父さんが登場。この叔父さんも、一癖も二癖もありそうだ。

★所収本
・岩永正勝・小山太一編訳/文藝春秋『エムズワース卿の受難録』(伯爵救出作戦)
                      (2007.3.27/菅井ジエラ)

 

 

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