北欧文学を読む



ラーゲルクヴィスト「地獄に降りたエレベーター」



支店長のヨンソンは“毛皮とおしろいの香りのする優雅な”婦人とホテルのエレベーターに乗り込んだ。
そして“柔らかなソファに身をよせて”座ると、エレベーターは下に降り始めた。
密室内で繰り広げられる甘い会話。彼らはどうやら夫婦ではないらしい。
彼がささやく。
「今夜は…今までになかったほど愛し合って…ね、きみは…?」
その時、ふとヨンソンは気付いた。エレベーターが一刻の休みもなく降り続けていることを。
彼は格子から外をのぞくと、そこには真っ黒な闇があるばかりだった。
恐怖にふるえる彼女と、必死に彼女を守ろうとするヨンソン。そしてついに、それは突然止まった。…
地獄に降りた二人の運命は?

著者のラーゲルクヴィストは『バラバ』や『巫女』などで知られる、現代スウェーデンを代表する作家。
1951年のノーベル文学賞も受賞している。
訳書に付された訳者による「作家・作品解説」には本作品についてこうある。
“度し難い愚鈍、図々しさ等を描いて余りあるが、その粗削りなたくましい筆致にかかわらず、傍観する作者の立場は絶望である。
設定が奇抜で象徴的であることはこの作家の特色で、後にあらわれた諸作品にもしばしば見受けられる”
(山口琢磨訳/学生社『世界短篇名作全集6 ヨーロッパ短篇名作集』所収)
                      (2005.5.7/菅井ジエラ)


 

 

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