P・G・ウッドハウスを読む



「マリナーの偉大な勝利(From a Detective's Notebook / Adrian Mulliner's Great Triumph)」(1959)


マルパス老将軍と王室弁護士ドリスコル、さえずり屋のフレディ、私立探偵のエイドリアン・マリナー、わたしの5人が喫煙室で一服していると、エイドリアン・マリナーが“静かな笑い声”を立てた後、口を開いた。
「…諸君は聞きたがるのではないかと思ってね」という彼に、誰もイエスとは答えなかったが、彼はそんなことは関係ないという体で話を続けた。
エイドリアン・マリナーが話し始めたのは、“自分の仕事の最大の勝利”と間違いなくいえるものだそうだ。それはシャーロック・ホームズの秘密についてだ。ホームズの仮面をはいだことは、これまで多くの問題を解決に導いてきたエイドリアン・マリナーにとっても、一番の喜びを与えてくれるらしい。
エイドリアン・マリナーがこの問題で着目したのは、ホームズが金のやりくりをする方法について。彼独自の視点でホームズに関する真相を暴いていく。

いわゆるホームズもののパロディ。マリナーが話を進めるうちに、一人またひとりと用事を思い出したなどあれこれ理由をつけては喫煙室を後にする。そんなこともお構いなしに話を続ける彼の“面倒をみるわたし”の姿が目に浮かぶ。

★所収本
・井上一夫訳/早川書房「ミステリマガジン」1975年10月号<234号>(マリナーの偉大な勝利)

                      (2005.4.23/菅井ジエラ)

 

 

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