P・G・ウッドハウスを読む



「ジーブスがいなくては(Scoring Off Jeeves)」(1922)


バーティーはアガサ叔母の家に行く前に、気付けの一杯を飲みに朝からバーに入った。すると、店の隅で大きなパンとチーズを前にして友人のビンゴが陣取っていた。バーティーは彼と随分会っていなかったので聞いてみると、今、彼は田舎に住んでいるらしい。ビンゴの田舎嫌いは有名なのだが、ディタレッジというところにいるそうだ。バーティーはディタレッジに知り合いがいるので、その話をすると、偶然にもその知り合いの家(グロサップ家)で家庭教師をしているという。
「グロサップの家で知ってるのは、あすこの娘だけだがね」とバーティーが話すと、突然目の色を変えたビンゴ。どうやらいつもの悪い癖が出たらしい。つまりその娘オノリヤ・グロサップに恋をしたのだ。ビンゴはいつも誰かと恋に落ちている男なのだが、今度はオノリヤというわけだ。バーティーはオノリヤが苦手だった。彼女は筋骨たくましく図体の大きな立派な女性で、バーティーは彼女と顔を合わす度にどこかに隠れてしまいたいほど圧迫感を感じていた。そんな彼女をビンゴは女神のように崇拝しているという。ただ、家庭教師をしている彼女の弟オスワルドと、全然そりが合わないのが悩みだとか。
その後、急いでバーを出たバーティーはアガサ叔母の家へ。着くなり、叔母はまたバーティーの結婚についてがみがみ言い始めた。「お前も結婚しなさい。…丁度幸い恰好な娘さんを私が知っています」。「その娘さんと云うのは一体誰です?」。そして叔母の言葉に、バーティーは悪寒を催した。「ロデリック・グロサップさんのお嬢さんで、オノリヤと云う人なんだよ」。叔母に結婚を無理矢理勧められた相手が、よりによってオノリヤとは。それ以来、ビンゴと叔母の二人ともに角が立たないよう丸く収める手だてがあるか、バーティーは悩むことになってしまった。
グロサップ夫人から招待を受けているので、明日早速行ってらっしゃい!と半ば強制的に話を進められたバーティーは、家に帰ると急いでジーヴスに相談した。といつもなら進むところだが今回は違う。ジーヴスの力を借りなくても、自分の力で見事に立ち回ってやると心に決めたバーティーが、自分なりに秘策を考えて、ビンゴに提案する。しかし、当のビンゴのいつもの恋愛病のせいで話は思わぬ方向へ行ってしまい…。
人の良いバーティーはいつも損な役回り。それにしてもビンゴの性格が羨ましい。

『比類なきジーヴス』(森村たまき訳/国書刊行会)の中に「ウースター一族の誇り傷つく(The Pride of the Woosters is Wounded)」「英雄の報酬(The Hero's Reward)」という2章があるが、それらは上記「ジーブスがいなくては」を2つの章に分けて書き直したもの。


★所収本
・上塚貞雄訳/「新青年」昭和4年4月増大号(ジーブスがいなくては)
・乾信一郎訳/東成社『専用心配係』(心配係の休暇)

                      (2005.3.30/菅井ジエラ)

 

 

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