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ピエール・ヴェベール「恋と数字 89 = 68」


財政家のルイ・ブリサックがヴォスゲスへ保養に出かけた時の話。
ホテルの食堂の大広間へ行くと、文字通り“女神のように気高く美しい女性”がひとり、彼のすぐ隣のテーブルに座って食事をしていた。
当地に来てから、絶え間なく降り続く雨のため、外にも出られず退屈していた彼は、何とかその婦人とお近づきになりたいと思った。
彼は数字には人一倍強かったが、こと女性に対して気の利いた台詞を言うことに関しては、からっきしダメ。
そこで、彼はいつもの手、つまり、まず第一に対象物を観察し、その後想像し、帰納し、実現させるという手順をふむことにした。
まずは彼女を観察する。すると、テーブルの上に「89」と書かれた純白のカードがあることに気づいた。
数字に強い彼は、これをうまく使えないものかと思案する。
89、8+9=?、9ー8=?、8×9=?、9÷8=?…。その時、ひらめいた。
「89」を逆さまにすると?答は「68」。「68」は彼の部屋の番号だったのだ。
彼は次の日、行動に移った。……
こんな方法でうまく恋仲になれる彼は、明らかにハンサムなプレイボーイに違いない。
(訳者不詳/「新青年」昭和3年9月号所収)
                      (2007.3.21/B)

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