P・G・ウッドハウスを読む



『笑の饗宴(Laughing Gas)』(1936)


若くしてハヴァショット伯爵家第三代当主となったレジナルド(レジー)・ハヴァショットは現在29歳。
これは前年、彼が28歳の時の話だ。
素行の悪さが心痛の種となっている従弟のエグレモントがまた問題を起こした。彼の母、つまりレジーの叔母クレアラが話すに、エグレモントがハリウッドの女性と結婚することになっているというのだ。ハリウッドの女性といえば、男女の駆け引きにおいては海千山千の強者ばかり。そうした女性はエグレモントにふさわしくないと叔母は考えている。そこで白羽の矢が立ったのが、レジー。
「早速、ハリウッドへいらしって、この迷える若者を説得して来て頂きたい。馬鹿馬鹿しいことを止めさせるのです。一族の長としての権威を発揮しておいで下さい」
かくして、レジーはハリウッドへ行き、エグレモントの婚約者と対面。しかし、奇遇にもその女性はレジーのかつての婚約者、アン・バニスターだった。
歯科医で知り合った売れっ子子役のジョセフ(ジョーイ)・クーリーとレジー。
ふたりは抜歯のために嗅いだガスのために、とんでもないことになってしまい…。
物語はハリウッドきっての美人女優エイプリル・ジュンやジョーイの下宿先で大映画会社の社長を務めるブリンクメーヤー夫妻、さらにはジョーイを憎む元子役スターのオーランド・フラワー、トミー・マーフィーらを巻き込み、ドタバタ劇になってくる。
“Laughing Gas(原題)”は昭和11年の作品だが、例の大林宣彦作品のような展開を早くも使っているとは、毎度のことながらウッドハウスはただ者ではない。
しかし、作品の完成度からすれば、ジーヴズやブランディングス城シリーズに比べ、見劣りする感がある。

★所収本
・黒豹介訳/三學書房『笑の饗宴』
・黒豹介訳/東西出版社『笑ガス』

                      (2006.5.13/菅井ジエラ)

 

 

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