P・G・ウッドハウスを読む



「身の程知らずもほどほどに(Gone Wrong)」(1932)


瀟洒なたたずまいの家の前庭に広がる芝生で、のんびりとくつろぎ、人が通ると挨拶にやってくる。ハリウッドのビバリーヒルズというところは、犬にとってまさに天国のような場所だ。
といっても、私がスティフィと初めて会ったのは芝生の上ではなかった。ブルテリアの雑種のスティフィは、唯一私が気さくに心やすい友達づきあいができる存在だ。
それが数週間あけて、久しぶりにスティフィと再会した時、彼の様子が以前とまったく違うのに気付いた。いつもなら、“一足飛びに駆け寄ってきて、挨拶もそこそこに私の顔をなめ回”すのだが、今日はポーズを決め込んで、まるでスター気取り。
「やあ、スティフィ」と声をかけると、彼は「スティフィ先生と呼んで欲しいものだな」と答える。何でも映画会社と契約を結んで、目下クララ・スヴェルトと映画を撮っているというのだ。…。

ハリウッドに住む犬の話。映画の都ハリウッドには動物のスターもたくさんいる。しかし、人間と同じで少しチヤホヤされると何とやら。“身の程知らずもほどほどに”

★所収本
・芦真璃子訳/心交社・レスリー・オマラ編『犬のいい話─ヤツラのいない生活なんて─』(身の程知らずもほどほどに)

                      (2005.4.22/菅井ジエラ)

 

 

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