P・G・ウッドハウスを読む



「マンキイ・ビジネス(Monkey Business)」(1932)


ムリナア(マリナー)氏がいつもの酒場で話し始めたのは、ある映画撮影所で助監督をしている甥のマーヴィンが、婚約者に危うく婚約を破棄されるところをゴリラに助けられたという話だった。
当時、その撮影所では大猛獣映画「暗黒アフリカ」を撮っていた。その映画のために、7人もの探検隊員の命を犠牲にして生け捕りにされたといわれているのが、檻の中にいるゴリラだ。
助監督は監督の言うことを聞かなければいけない割の合わない仕事だが、マーヴィンは会社の同僚や宣伝部の人たちに「あのゴリラの檻の中で結婚式を挙げろ」と、無理を言われている。写真を撮って雑誌の表紙に載せてやるといわれ、婚約者のロザリイは乗り気だが、当のマーヴィンは「広告じゃないんだからちゃんと牧師さんの前で、おごそかにやる方がいい」と言って聞かない。そんなマーヴィンの態度に、ロザリイは「臆病ね、あんた。…どうしても檻の中で結婚式をやらないんなら、婚約は取り消しよ」と言い出す始末。幸せな結婚生活が過ごせると思っていたのに、雲行きが怪しくなってきた。
その数日後、マーヴィンは宣伝部の男を見かけたので声をかけると、宣伝部の彼は例のゴリラのことを話してきた。(檻の中で結婚式よりも)もっといいプランを立てたという。今日の夕方5時にゴリラを逃がすというのだ。そして…。
ちょっとハチャメチャな内容で展開がブチブチ切れている印象をもったが、マリナーものだからといえば納得できなくもない。訳者には申し訳ないが、これって翻訳のせい?

★所収本
・小柴禮助訳/「新青年」昭和8年7月号(マンキイ・ビジネス)
・大門一男訳・伊藤龍雄画/「スタア」昭和13年4月上旬号・4月下旬号(聖林夜話 モンキイ・ビジネス)
・森村たまき訳/国書刊行会『よりぬきウッドハウス1』(モンキー・ビジネス)

                      (2005.3.28/菅井ジエラ)

 

 

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