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ミステリを読む




ジョン・ビンガム
『第三の皮膚』


新聞社でテープ室のボーイをしているレス・マーシャルには、片思いの女性がいた。名前はヘスター・ブラウン。レスの友人であるロン・ターナーの彼女だ。
レスが最近足繁く通っているダンス・ホールで、彼女をよく見かけるのだが、ロンとヘスターは最近どうやら喧嘩をしたらしく仲が良くない。
それでレスとヘスターは何度か一緒にダンスするなどして急接近した。
ロンは突然切れる性格なので、レスは慎重にヘスターと接していたが、ロンからヘスターと付き合っても構わないと言われ、猛アタックすることに。
レスは自分は新聞記者だと嘘をついて、ヘスターに言い寄ると、ヘスターはにわかに興味を示して、満更でもない雰囲気になる。
その後、彼女からある重大な悩みを切り出されるのだった。
“昔の男に100ポンドばかり借りがあり、そのために付きまとわれている。その金を返せば、晴れて自由の身になれるが、返さないとその男と縁が切れない。”

一方、レスはロンにある相談を切り出されていた。それはある金持ちの老婦人の家に忍び込む手伝いをしてくれないかということだった。
ロン曰く、その老婦人の生活リズムを熟知しているので、忍び込むのは簡単。自分が邸に入るから、レスは逃げる時のために外で車の中で待機しているだけでよい。
レスは、はじめのうちは、その話に耳を貸さなかったが、ヘスターの懇願を聞いてロンの手伝いをすることに決めたのだった。

最初で最後の一夜限りの犯行は、簡単に終わるはずだった。
それが失敗に終わる。しかも守衛の殺害という最悪の結末がついて…。
直接手を加えたのはロン・ターナーだった。レスは“早く逃げよう”と叫んでいただけだ。
しかし、逮捕されて起訴されれば、ふたりは同罪になってしまう。
本人より犯行の一切を聞いたレスの母親アイリーンは、息子を守ろうと工作をはじめるのだが…。

その筋の方たちには有名な“誰も読まない本”を読んでみた。
登場人物の心理描写が作品の大部分を占めるといってもよい。ただ、事件に関係のない人物たちの心理描写も、これでもかと思うほど綿密に行われているので、
純粋なミステリ愛好者、特に謎解きやスリルを味わいたいと考える向きには、退屈に感じる部分が少なくないように思う。
また、突然迎える結末も「?」を付けざるを得ない。この作品には、この結末が妥当だといえなくもないが。
(中村能三訳/創元推理文庫)
                           (2007.9.29/菅井ジエラ)

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