「ミステリを読む」ページトップへ

ミステリを読む




楠田匡介
『人肉の詩集』



「六十九殺人事件」

「ニンフオマニー・マアダー」

「窃視狂」

「フレンチ殺人事件」

「猫と庄造と二人の女」


「人肉の詩集」
私は以前から恋慕していた香代子と逢瀬を重ねていた。
だが、彼女は津田政輔という男の妻。“人妻との邪恋の恐ろしさ”を感じながら、その日も津田が船で横浜を離れるのをよいことにベッドを共にした。
彼女のそばでうとうとしていると、突然、彼女が私を揺り起こした。
彼女の顔は青ざめ、その唇はふるえていた。
「窓の外に……窓の外に、誰かいるの」「あのひとよ……」
「馬鹿な──」
私はベッドから出て、窓に向かいカーテンを引き開けた。だが、そこには誰もいない。
「──誰もいませんよ」

その後、彼女は恐ろしいことを言いだした。
「津田の前夫人は、私の姉だって事は知っているわね?」
「えゝ、知っていますよ、あの三月の下町の大空襲で亡くなった?」
「いいえ、津田に殺されたのです」
彼女は続ける。
「…そればかりではないわ、……あのグループの島崎国彦さん、富村貞一さん、どうして、急にあのグループからいなくなったの?」「そして川井さんは?」
島崎という男は山で遭難、富村は江戸川の氾濫で死亡ということになっているが、二人とも死体は出てこなかった。そして川井は行方不明。
香代子に言われてみると、確かに不思議な事件であった。
「津田は…上手にアリバイを作って置いて、私達を殺すチャンスを狙っているんです」
その時、私は彼女の話をまったく取りあおうとはしなかったのだが…。

                           (2008.4.12/菅井ジエラ)


「乳房を食う男」
たった1人の妹を失ってから、私は毎日カフェ『万年青(おもと)』に通うようになった。
町の人たちに忘れ去られていると思うほどひっそりとしている、その静けさが好きだったのだ。
また、その店に「みどり」という女性がいるのも、毎日通っている理由かもしれない。
彼女は“目の可愛い、頬の艶の良い……二十歳位”の女性で、
いつも顔を合わせているうちに、淡い恋心を抱くようになった。

当の「みどり」も、最近は私に特別な態度を取るようになってくれていたのだが、
それよりも私は、この4、5日、『万年青』の隅に、私と向かい合って座っている1人の男のことが妙に気になり始めた。

彼は“二十七八の、顔色のひどく悪い、肺病ではないかと、思われる様な、瘠せた、髪の毛の長い”男だった。
挙動不審ぶりを無気味に思っていると、ふとしたきっかけで、彼が私に話しかけてきた。
「…いや、此の世の中で此の話を聞いてくれるのは、あなただけかも知れないのです。だけどもこんな話をあなたは信じてくれるでしょうか」
梅尾と名乗る男は、そう切り出すと、不思議な話を始めるのだった。

                           (2008.4.12/菅井ジエラ)


「硝子妻」

「浴槽の死美人」

「冷蔵庫の中の屍体」

「密封された尼僧」

「依託殺人」

「屍体の殺人」



(あまとりあ社)


「文芸誌ムセイオン」トップヘ

All Rights Reserved Copyright (C) 2004-2015,MUSEION.

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

   

inserted by FC2 system