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ミステリを読む




ヘレン・マクロイ
『幽霊の2/3』


メッグ・ヴィージーは何気なく見た新聞記事に愕然とした。女優のヴィーラ・ヴェインがハリウッドを去り、夫の元に戻るというのだ。その夫とは売れっ子作家のエイモス・コットルであった。彼らは3年前に別居。エイモスはアルコール中毒になるなど、ヴィーラとの良い思い出はなかった。そんなエイモスとは、メッグの夫がエイモスの著作代理人を務めるという間柄にある。
“ヴィーラの帰郷は思わぬ波乱を招いてしまう”。そう信じて疑わないメッグはエイモス、ヴィーラそれぞれに急いで手紙を認める。エイモスにはヴィーラの帰郷を周りの誰もが歓迎していないことと、彼にとって彼女はトラブルメーカー以外の何ものでもないということを。ヴィーラにはいつでも歓迎するので、しばらく自分の家に滞在してくれても構わないという旨を記した。しかし、慌てた彼女は恐ろしいことにエイモスに送るべき手紙を、間違ってヴィーラに送りつけてしまう。

そして、ヴィーラがエイモスのいる町に戻ってくる日。出版社社長トニー・ケインの家に集まり、パーティを催すことになった。エイモスはヴィーラを空港まで迎えに行ったが一向に帰ってこない。ヴィージー夫妻、ケイン夫妻などパーティの参加者は心配するが、現れたエイモスの姿を見て誰もが驚いてしまった。なぜなら彼が泥酔してしまっていたからだ。
パーティの間中、エイモスは酔いつぶれていたが、そのエイモスも参加して「幽霊の2/3」というゲームをすることになった。しかし、ゲームの最中に彼が死んでしまう。毒殺だった。殺したのはパーティ参加者の誰かに違いない。
ちょうどパーティに居合わせたニューヨーク郡地方検察庁の精神医学顧問バジル・ウィリングが捜査を始めるが、捜査は初めから難航する。というのも、エイモス・コットルなる人物の素性がまったくわからなかったからだ。
「アクロン市には、コットルという名前の居住者の記録も、…またメソジストの教会にも、エイモスという子供をもつ、マーチン・コットル、アマンダ・コットルという二人の宣教師が三十年代に中国にいたという記録はのこっていなかったのです。…また海軍省にも、エイモス・コットルという設営部隊にはいっていた男の記録は見当たらなかったのです。…このように今まで調査したところによれば、エイモス・コットルという人間は、全く存在していなかったのです」
では、エイモス・コットルなる人物はいったい何者なのか?そして、この殺人事件にエイモスの消された過去は関係しているのか?はたして真相は?
この作品は創元推理文庫の絶版ものの中でも手に入りにくいレアものだが、絶版のまま埋もれさせておくにはもったいないほどの出来映えだと思う。個人的には『暗い鏡の中に』より、こちらの方が好みだ。
(守屋陽一訳/創元推理文庫)
                           (2005.6/30/菅井ジエラ)

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