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ミステリを読む




宮野村子
「銀杏屋敷の秘密」


千代が若夫人のお傍附きとして銀杏屋敷へ上がるという日の前夜。母は心配していた。というのは銀杏屋敷には良からぬ噂がいろいろあったからだ。
村のはずれの淋しい林の中にひっそりと佇む、大きな銀杏の木が特徴的なこの屋敷は、元はある旧家の別邸として使われていたが、十数年前に先代の主人が屋敷の中で自分に背いた女を斬り殺し、自身も割腹した上に庭の井戸に身を投げて死ぬという事件があってからは、誰も近寄らなくなり、幽霊屋敷と化していた。それが半年ほど前にどこかから人が来て住み始めたのだ。住人はご隠居様と呼ばれる老夫人と、その息子の嫁で今は未亡人の梢夫人、そして老爺の源吉、老女中トメの4人。それに猛犬を1匹飼っているという。
実は千代がこの仕事を引き受ける前、親友の光江がお傍附きとして働いていたのだが、彼女は見知らぬ男と駆け落ちをしてしまい、今では行方不明。光江はそんなことを平気でするような女性ではなかったため、村では彼女がいなくなったのには別の訳があるに違いないと噂されていた。
母の心配をよそに、屋敷に行くと言い張る千代。彼女は、あることしか考えていなかった。
“屋敷から忽然と姿を消してしまった光江はどうしたのか。そして、光江が最後に言った謎のような言葉は何を意味するのだろう”
屋敷の住人がひた隠しにしている秘密。その秘密を知ってしまった千代は…。
衝撃のラスト。最後はひたすらに重い。
(穂高書房『紫苑屋敷の謎』所収)
                           (2006.7.15/菅井ジエラ)

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