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ミステリを読む




パトリック・クェンティン
『俳優パズル』


私、ピーター・ドルースは自分が率いる劇団とともにダゴネット劇場にやってきた。
今回の劇は、私にとっては、アルコール依存症から立ち直り、演劇界にセンセーショナルな復活を遂げるための一世一代のギャンブルといえる。また、関係者も皆、私と同じようにこれからの人生をこの劇の成功に託していた。
原作者のヘンリー・プリンスはまったく無名ないなかの青年でしかなかったし、主役のコンラッド・ウェスラーは飛行機事故で大怪我をし、この劇に再起を賭けていた。そして、もう一人の主役であるミラベル・ルーも、度重なる夫の暴力から離婚後精神を病んでいたが、これが復帰作となる。
そういった点でこの劇は誰にとっても重要な意味をもつものだったが、その舞台となるダゴネット劇場はあまりにも不適当な場所だった。なぜなら、この劇場で以前、リリアンという女優が不可解な死を遂げ、それ以来半ば幽霊屋敷と化していたからだ。
そんな中でリハーサルが進行していくが、老優ライオネル・カムストックがリリアンの幽霊を見たと叫びながら、心臓発作を起こし死んでしまう。私と劇団の後援者であるレンズ博士は、劇が中止になるのを恐れ、秘密裏に事件の真相を突き止めようとするが、しばらくして第2の事件が起こるのだった。
ミラベルの前夫ローランド・ゲーツやヘンリー・プリンスのおじのジョージ・クレーマー、兄のコンラッドと一緒に飛行機事故に遭い、精神状態に異常をきたしてから自分がコンラッドと思いこんでいる異父弟のウォルフガング・フォン・ブラント…。
カムストックの死は事故だったのか?一連の事件の真犯人は誰なのか?この劇は客の拍手をもって迎えられるのだろうか?物語は途中から急展開し、一挙にクライマックスを迎える。
途中の展開には、少しこじつけ的なところがあったが、最後の落としどころはしっかりとしていて良かった。
今では使用を見送られる語を多用しているため、復刊が見込めないのだろうか。新訳でぜひまた日の目を見てほしい一冊だ。
まったくの蛇足だが、本ののどには製本する際のメモなのか折数とともに「デゴネット劇場の謎」というタイトルが見られた。もしかすると、邦題が『俳優パズル』に決まる前の仮題が「デゴネット劇場の謎」だったのかもしれない。
(鷺村達也訳/創元推理文庫)
                           (2005.7/16/菅井ジエラ)

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