南欧文学を読む



 『美しい夏』 チェーザレ・パヴェーゼ(イタリア)


洋裁店で針子をしているジーニアはもうすぐ17歳になる女の子。兄と一緒に暮らしている。大人の女性に憧れる彼女は、少し年上のアメーリアという女性とよく遊ぶようになる。画家のモデルをしているアメーリアは自由奔放な反面、少し自堕落なところがあるのだが、ジーニアにとってはそこが魅力的でもあるのだ。カフェやダンスホールに行って楽しく遊ぶふたり。そしてある日、ジーニアはアメーリアの友達であるロドリゲス、グィードというふたりの男性と知り合いになる。ジーニアは一目見たときから兵隊で画家でもあるグィードに惹かれ、恋するようになっていく。グィードのアトリエに通うようになるジーニア。一方、グィードもジーニアをやさしく受け入れる。そんなある日、ジーニアはグィードのアトリエで、アメーリアがヌードモデルをしているのを見る。ジーニアはアメーリアへの対抗心からか「あたしも画いてみて」と裸になるが…。

思春期の子供たちの誰もが持つ“早く大人になりたい”という気持ち。ジーニアもその例外ではなく、思春期の子供特有の「満たされたい」「理解されたい」という想いを抱いている。こう書くと、よくありがちな大人の女性を夢見る子供の話か、ということになるが、ここでひとつ考えておきたいことがある。それはパヴェーゼがこの作品を書いた1940年のイタリアは、ムッソリーニ政権下にあったということ。ファシズムのなかに生きる子供たちの心境も加味しながら読んでいくと、より文学的な深みが出てくるように思う。

ちなみに、この作品は発表(1949年)直後から大変評判になり、イタリア最高の文学賞であるストレーガ賞を受賞している。
                           (2003.9.30/菅井ジエラ)

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