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スティーヴン・リーコック「情が仇」


道を歩いている時、急にタバコを喫いたくなった私は、早速喫おうと思ったが、どうやらマッチを忘れて来てしまった模様。どうしようと思っているところに、52〜53歳の人の良さそうな紳士が、右手にステッキ、左手に大きな包みといういでたちでやってきた。
この男性にマッチを借りられるぞと喜んだ私は、彼にお願いすると、
彼は“イヤ、お安い御用で…”と言いながら、外套のポケットに手をつっこんだ。
「ハテナ、確かにここに入れて置いた筈だが…」
“ちょっと待ってください”と言って、探し始めた紳士。
私は恐縮しながら待っていたのだが…。

こういう話はよくありそうだが、それにしてもこの紳士が可哀想すぎる。
(訳者不明/「新青年」昭和15年新年特大号所収)
                      (2006.9.2/B)

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