志賀直哉を読む




「濁った頭」


“(自分はいつも余り物を云わない津田君の今晩の調子に驚かされた。そして二年間も癲狂院で絶えず襲われていたと云うこの人の恐ろしい夢を……然し津田君は単刀直入に聞いてくれと云って語り出した。)”
物語はそんな一節から始まる。いわば津田という男の半生の告白だ。
小説家になろうと思っていた少年時代。そして17歳からキリスト教徒として生きた7年間。
母方の親類で遊びかたがた彼の家に手伝いにやってきていた、彼より4つ年上でお夏という名の女性との恋…。
彼は青春時代をどう生き、何が彼を癲狂院に向かわせたのか。絶え間なく葛藤を繰り返す彼の苦悩の日々が描かれる。
志賀直哉の作品では、父への反抗心がテーマとなることがしばしばあるが、この作品でもその一面が垣間見られる。
この作品を読んでいると、何故かふと夢野久作の作品を連想してしまった。
                      (2005.5.25/菅井ジエラ)

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