P・G・ウッドハウスを読む



「ミステリ小説に関する二、三のこと
(About These Mystery Stories)」
(1929)


ミステリ小説という大洪水に呑み込まれつつあるイギリス。この氾濫は一流の作家を浅薄なスリラー作家に変えてしまっている。巷には探偵小説が溢れかえっているが、それらの作品百のうち九十九は駄作である。
こう考えるウッドハウスが、ミステリ小説を書く大変さを切々と説く。

もし、自分に息子がいるとして、その息子がミステリ小説を書こうと思っているとしたら…。読者にあくびまじりにこう聞かれるのがオチだ。

「サー・グレゴリー・バルストロードが書斎で殺されているのが発見された」→“それがどうした?”
「ドアというドア、窓という窓は全部閉まっていた」→“お定まりじゃないか”
「少なくとも半ダースの容疑者がいる」
 →“ああ、そうかい。で、けっきょく、そのうちひとりが犯人だとわかるんだろ?”

誰しもペンを握れるような年頃になれば、ミステリ小説を書きたいという気になるかもしれないが、そこには想像を絶するような苦難の道が待っているのだ。
並大抵の腕では、ミステリ小説は書けないと記すウッドハウス。彼はこのエッセイの中で、どんな探偵を登場させ、悪党はどういったタイプにすべきかなどについても、それぞれ3つのタイプに分けて述べている。
シャーロキアンとしても有名なウッドハウスが語る「ミステリ小説に関する二、三のこと」。諷刺がきいていて、なかなか面白い。

★所収本
・山田順子訳/B・S・P『バカミスの世界 史上空前のミステリガイド』(ミステリ小説に関する二、三のこと)
                      (2006.6.22/菅井ジエラ)

 

 

「P・G・ウッドハウスを読む」ページトップヘ
「文芸誌ムセイオン」トップヘ

All Rights Reserved Copyright (C) 2004-2016,MUSEION.

 

inserted by FC2 system