P・G・ウッドハウスを読む



「ガートルードのお相手(Company for Gertrude)」(1928)


アメリカにある犬用ビスケットの会社ドナルドソンズ・ドッグ・ビスケット社。そこの社長令嬢と結婚したエムズワース伯爵の次男坊フレディ・スリープウッド。彼は義父にイギリス国内における同社製品の拡販を命じられていたが、目下、叔母のジョージーナに猛アタック中。というのも叔母は4匹のペキニーズと、2匹のポメラニアン、ヨークシャー・テリア1匹にシーリハム5匹、ボルゾイ1匹、そしてエアデール・テリアを1匹飼っていたからだ。だが、そこは一癖も二癖もある叔母ゆえ、そう簡単には事は運ばない。フレディは失意の表情を浮かべながら、叔母の家を出た。
その時、オックスフォードで同窓だったビーフィ・ビンガムとばったり会う。
「ビーファーズ!」
フレディは再会を喜んだが、真っ黒な僧服に身を包んだ(どうやら牧師をしているらしい)ビーフィは元気がない。
「叔母さん、ぼくのこと何か言ってた?」
「きみの何を? おっと、あのことだな! きみか、ガートルードと結婚したがっている文無しの男ってのは?」
聞けば、ビーフィとガートルードのふたりはお互い愛し合っているが、叔母はそれを許さず、ガートルードをブランディングズに行かせているという。
「…一族の若いのがよからぬ相手に惚れ込んだりすると、きまって頭を冷やすためにブランディングズにぶち込まれる。親父がよくこぼしているよ、いい迷惑だって。…」
そこで、フレディはゆうべ観たという映画から名案を思いつく。
「…きみ、これからブランディングズに向かってくれ」
つまり、ブランディングズでエムズワース伯爵に取り入った後、伯爵を味方に付け、事情を説明。ふたりの結婚を認めてもらおうという作戦だ。
というわけで、ビーフィはポップジョイという名を騙ってブランディングズ城に乗り込んだのだが…。

エムズワース伯爵に好かれよう好かれようと努力するビーフィ。しかし、相手がエムズワース伯爵となると一筋縄ではいかない。もちろん“ゆうべの映画”のように上手くいくはずがない。でも、こんなところに落としどころがあったとは。ウッドハウスにはいつもそのプロットの秀逸さに感服させられる。

★所収本
・岩永正勝・小山太一編訳/文藝春秋『エムズワース卿の受難録』(ガートルードのお相手)

                      (2006.2.21/菅井ジエラ)

 

 

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