P・G・ウッドハウスを読む



「ペギーちゃん(In Alcala)」(1911)


ニューヨークの安アパート、その中でも一番安い玄関わきの独身部屋に住むルターフォード・マックスウェルの夢は有名な作家になること。日中は銀行員として働いているが、仕事が終わると部屋にこもって毎日小説を書いている。彼が住むアルカラ・アパートには、コーラス・ガールや新聞記者などが住んでいて、昼も夜も静かになるということがない。彼がベッドに入ってしばらく経ってからも、部屋の前をいろんな人が“ボソボソあるいはペチャペチャしゃべりながら”通りすぎるという有様だ。
その中で、彼はある女性の声が気になっていた。彼女の顔を見たことはないが、名前は分かっている。ペギー。その名前を覚えたのは、彼女が歌を歌いながら帰ってきた時に、友達らしい女性が『ペギーちゃん、およしよ、そんな歌!』と言ったからだ。
うだるように暑いある夏の日のこと。いつものように彼が小説を書いていると、ドアをノックする音が聞こえた。彼はドアを開けると、そこに見知らぬ女性が立っている。彼女はルターフォードに向かって『タバコを持ってる?』と聞いた。彼は持っていないと言ったが、その女性は『なるほど』と言って、また『タバコを持ってる?』と聞き、ずかずかと彼の部屋に入ってくる。彼が応対に迷っていると、もう一人の女性が現れた。
『グラディス!こんなとこで何してんの?』
すると、初めの女性は新しく入ってきた女性に言った。『なによ、ペギー?』。
“これが「ペギーちゃん」だったのか!…やっぱり俺の想像通りだった”
それから、ペギーはルターフォードの部屋をよく訪れるようになる。ルターフォードもバレーダンサーをしているというペギーと会ってからは筆が進み、調子がいい。
しかしある日、口喧嘩をした次の日からペギーがいなくなってしまい…。
若い男女の恋愛物語がさわやかに描かれている。しかし、最後には少しほろっとさせられてしまう結末が。

★所収本
・乾信一郎訳/「新青年」昭和6年8月号、同訳/「宝石」昭和27年9・10月号連載(ペギーちゃん)

                      (2005.2.28/菅井ジエラ)

 

 

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