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スティーヴン・リーコック「サンタクロウスの錯誤」


クリスマス・イヴの話。
ブラウン一家は隣に住むジョーンズ一家に招かれた食事を共にした。
家族がみんなが2階に行ってから、ブラウン氏とジョーンズ氏の話題は子どもたちへのプレゼントについてだった。
ブラウン氏がジョーンズ氏に聞くと、彼は汽車を買ったと言ってサイドテーブルから紙包みを取りだし開けて見せた。
実に良くできている汽車を見て、2人は少年の心に戻ったのか、時間を忘れ無邪気にはしゃいでいた。
その頃、2階の客間では夫人たちも娘たちのプレゼントについて相談し合っていた。
ジョーンズ夫人は娘のクラリスのために人形を買ったと言う。
「こんな可愛いお人形、あたし見たことがありませんわ。あたしもアルヴィナにこんなのを一つ買ってやらなきゃ…」
「…きっとお人形の着物を並べてみたり着換えさせたり大変な騒ぎでございましょうよ、…ほら、お人形には別に着物が三枚ついていますんでございますよ。」
「まあ、なんて可愛いんでございましょうねえ!中でもこの藤色のが一等よく似合いますわ…」
こんな具合で、彼女たちは30分経っても人形に着物を着せるのに夢中だった。
一方、子どもたちもクリスマスプレゼントの話題で持ちきり。だが、親たちとは少し事情が異なるようだ。……。

案外、子どもはこんなものなのか。いや、そうは思いたくない。
こう考えると、サンタクロースがプレゼント選びに相当苦労しているのが目に浮かぶ。
(延原謙訳/改造社『世界ユーモア全集2 英米篇』所収)
                      (2006.12.26/B)

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