ピエール・カミを読む






「鮮血トランク事件」


今朝、町中を震撼させる事件が起こり、号外が配られた。
「怪奇、血染めのトランク!」
今朝7時頃、市内各駅から悪臭を放つトランクを一時預かりに置いていった者がいると警察に連絡があったので、それぞれの現場に急行しトランクを開いたところそれらすべてからバラバラにされた死体が見つかった。その後続々と同様のトランクが見つかり、その数、合計759個。犯人は死体をバラバラにした後、ごちゃまぜにしてから手当たり次第にトランクに詰め込んでいるので、犯人はもちろんのこと、被害者の身元を特定することも至難のわざだった。
それから十日後のこと。事件は一向に進展を見せず、警察は手をこまねいていたが、我らがオルメスは一点だけ捜査の糸口を見つけていた。
「…君、大急ぎだ、わしの変装室へ行って、硝子屋に変装するんだ、そして出かけるんだ」
どういうことかまったく飲み込めていない助手とともに、彼の推理では犯人がいると思われる家に向かうのだった。
この推理は、もう神業だとしかいいようがない。
(吉村正一郎訳/出帆社『ルーフォック・オルメスの冒険』所収)
                (2005.5.27/菅井ジエラ)

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